行政の課題

(D)虐待を見抜く目と対応 (G)国での課題
(E)職員への研修 (H)都道府県での課題
(F)行政における課題 ( I )区市町村での課題

各自治体における「子どもの虐待防止」の取り組みアンケートのまとめ

(D)虐待を見抜く目と対応

(1)乳幼児検診は親と子に定期的に会う機会であり、両者を見ることによって虐待を見つけられる。そのためにも保健婦などは虐待を見抜く目と対応する心を育てる必要がある。検診の場で相談窓口を設置することも必要。検診に来ない親子の訪問調査や医師会に委託している検診の実態把握も必要。
(2)虐待が見つかったときには、実態把握と親と子のそれぞれのケアについて対応できるようにマニュアル化と連携する仕組みが必要。関係機関に通告しただけでは解決しない。子どもを一時保護しても親のケアをしなければまた虐待されてしまう。法では親のケアは明文化されていないため、自治体で取り組む必要がある。

(E)職員への研修

(1)子どもやその親に関連する部署の職員への研修については、虐待している親が窓口に来たり電話をしてきた場合や関係機関からの問い合わせに適切な対応が必要となるため、0〜18歳の子どもとその親と関連する部署の職員全員への研修が必要。
(2)公立の学校・保育施設の職員への研修については、保育園職員へ研修していると書き込まれ(いる)という回答が多い。 0〜18歳の子どもが法の対象なので、保育園・児童館・幼稚園・小学校・中学校・高校の全教職員への研修が急務だ。学校では主任指導教員のみしか研修は受けていないところが多く、校長会でリーフレットを配布しただけのところもある。その中でも、学校での研修はわからないという回答が幾つもあった。これでは、法の意義も必要性もわからずに縦割りの考え方しかしていないのがわかる。子どもと接する学校の教職員への研修は特に重要で、虐待を見抜く目を持ち、どういう対応をとったら良いか認識し、虐待を疑った時に間違えて通告しても公務員の守秘義務違反にならないということを周知しなければならない。

(F)行政における課題

(1)0〜18歳の「子ども」にかかわる庁内を連携した組織作りが必要。4省庁の連絡協議会は局長が出席するが、報告が多く議論がされていない。現場や係長級職員の連携会議が必要だ。
(2)「児童虐待防止」は、ひとつの省庁や担当部署だけにまかせるのでなく全庁的に取り組む必要性を全職員が理解する。
(3)平成13〜22年の「健やか親子21」計画の実行と進行管理が必要。

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(G)国での課題

(1)法制化するだけでなく明確な政策を打ち出し、自治体へ通達だけするのではなく進行管理や実態把握に努める。
(2)法が施行され「青少年問題特別委員会」は解散されたが3年後の見直しがあり、既に問題点が指摘されているため議論の必要がある。
(2)子どもの親権が親から喪失し、児童相談所長が子どもの後見人となる場合、人事異動や退職もあり職務を離れても一生後見人でいることは子どもにとっても後見人にとっても不自然であり、民法見直しが必要。
(3)一時保護施設の設置基準では、虐待を受けた子どもも非行少年少女も同じ部屋で生活し、施設内でも虐待されることがあり、生活環境の向上と施設の拡充が急がれる。平成12年4〜12月に東京都では、養護施設は97%、一時保護施設は90.6%の入所率。
(4)民間機関との連携の努力義務が明文化されたが、役割分担をしたうえで支援する仕組みが必要。

(H)都道府県での課題

(1)児童相談所の設置基準は人口50万人に1箇所だが、設置は不十分だ。青森県では法が施行され倍増した。この10年で相談数は10.56倍だか職員数は1.15倍だ。東京都では、一人の児童福祉司が90件ほど受け持っていて、きめ細かな対応が難しい状況。人材の育成と配置が必要。
(2)自治体の学校教職員の身分は都道府県にあり、子どもと接する全職員への研修(自治体と連携)が急務だ。校長会などでリーフレットを配るだけでは研修と言えない。東京都の教職員向けのリーフレットに民間団体の相談電話番号が記載されているが、教職員も悩んでいるためホームページのアドレスの記載が望ましい。
(3)行政施設は市民が相談しにくいため、東京都のように民間団体と連携していく必要がある。まず民間団体を把握することから始める。

(I)区市町村での課題

(1)市民に身近な自治体として、児童相談所と連携をしながら全庁的な視野から市民からの相談・対応をする仕組み作りが急務だ。そして、虐待している親へのケアの仕組み作りをしないと繰り返される。
(2)虐待の予防のため、育児不安解消や父親の育児参画を勧める施策を展開。
(3)市民は虐待の早期発見の努力義務が明文化。地域で子どもと親を見守る心を持つ。(2001年4月に起きた千葉県での家族ぐるみの虐待は近所の方々は知っていた。都会よりも地方の方が表面化しない虐待が多く、死に至ることが多い)

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